明けましておめでとうございます。武蔵野レコード中川です。
今年もよろしくお願いいたします。
年末のいろんなまとめ記事に触発されて、「自分たちも2019年を総括した方がいいんじゃないか」と言い出したくせにまったく年内まとめられませんでした。すみません。
先に鈴木さんが記事上げてくれているので、そのフォーマットに便乗して昨年のまとめを。
私は相も変わらず、新譜というよりは過去ものが中心で、高価なものはほとんど買わない主義ですので、そのあたり念頭に置いた上でご覧ください。
というわけで、新譜(と新しめ)&中古でお届けします。
新譜(と新しめ)編
Bobby Oroza “This Love”
同僚が教えてくれた一枚。
これ、坂本慎太郎氏と森雅樹氏(EGO-WRAPPIN)がお互いにレコードを薦め合う対談企画で、坂本氏が一枚目に紹介したもの。同僚が教えてくれたその場で聴いてカッコ良すぎて悶絶するかと思いましたよ! というかこれは坂本氏の音楽に近い。ものすごく近い。
2019年リリースの新譜とは思えないほど、ヴィンテージ感のある手触り。フィンランド人が奏でる「ローライダーソウル」。ってさらっと書いてますが、そもそも「ローライダーソウル」ってなんだよと思って調べたところ、「イーストLAに住んでたメキシコ、および中南米の移民たちが好んで聴いていたスウィート・ソウル・バラード」を指すらしいです。知らんかった!
で、振り返ってこれを聴いてみると、確かに「ローライダーソウル」的なスウィート・ソウル・バラードではあるんですが、儚げな歌声といい、どことなく冷え冷えとした演奏といい(ちなみに、バックを務めるレーベルの箱バンの名前は「コールド・ダイヤモンド&ミンク」)、ちゃんと今っぽい音楽だということを自覚した次第です。
ソッコー取り寄せて、一時期、こればっかり狂ったように聴いてました。個人的には、2019年ナンバーワン。ヒモっぽいヤサ男のルックスも良い。
全編いいんですが、聴いてる内にだんだん鬱々としてくるのが玉にキズ。
吾妻光良&The Swinging Boppers “Scheduled by the Budget”
日本最高峰の現役ジャズ・ブルースギタリスト(と思う)吾妻光良氏率いるバンドの新譜。
熟練の演奏をバックに、描かれるのは「ご機嫌目盛り」「大人はワイン2本まで」「Photo爺ィ」など、これでもかというぐらいの老年の悲哀(メンバーの平均年齢は61歳ぐらい)……最高です。一度生で観てみたい。
馬鹿だなーと思って聴いていると、EGO-WRAPPINの中納良恵氏が歌う「Misty」が普通に名曲だったりするので油断できません。
こんな爺さんになりたい。
思い出野郎Aチーム “繋がったミュージック/ステップ”
ドラマ『デザイナー渋井直人の休日』を観ていて、OP「ステップ」が素晴らしいなと思い、買ってみた一枚。
ダミ声が最高ですね。ソウルマナーあふれる演奏も素晴らしい。下敷きとなっている曲がCharles Wright & The Watts 103rd Street Rhythm Bandの”Express yourself”だと分かるまで3ヶ月かかりました。
Charles Wright〜は”Loveland”も名曲だからあわせて押さえておきたい。
笹倉慎介 with 森は生きている “抱きしめたい/風にあわせて”
曲名からして、「はっぴいえんどのフォロワーね、はいはい」とナメていてすみません。あと、これ2014年リリースだけどここで紹介していいのか。
曲、声、演奏すべてイイ! 笹倉氏は年末のWOWOWのドキュメンタリー「ノンフィクションW TOKYO ROCK BEGINNINGS -日本語のロックが始まる『はっぴいえんど』前夜-」で大瀧詠一役に抜擢されたぐらい、声が大瀧氏に似ています。
この録音スタジオも、「ビッグ・ピンク」というか、狭山の米軍ハウスというか。
Durand Jones & The Indications “Make a Change/Is it Any Wonder?”
これも2017年ですが……「ローライダーソウル」つながりで、なんとなく買ったルイジアナ出身のソウルシンガーによる一枚。ファンキーなA面もなかなかですが、やはりメロウなB面に軍配が上がります。
歌っているのこんな人だったのか。
中古編
G.Love & Special Sauce “Yeah, It’s That Easy” オランダオリジナル
これも昔よく聴いた一枚(1997年リリース)。ジャズ×ブルース×ファンク×ヒップホップみたいな文脈で聴いておりましたが、このアルバムは、リズム重視は鳴りをひそめ、ぐっとソウル寄りになっていて、発表当時に興奮した覚えがあります。
CDでもそこそこ満足していたものの、やはりこういった生っぽい音はレコードの面目躍如です。”Lay down the law”、”Take you there”、”Willow tree”あたりはいつ聴いてもいいですね。
音楽が小難しくないのが、ギャレット・ダットン(G.Loveの本名)のいいところだゾ!
The Ronettes “…presenting fabulous the Ronnets featuring Veronica” US リイシュー
武蔵野レコード定例会にて、「2019年に亡くなった人を悼む追悼盤」としてかけた一枚。2019年はセッション・ドラマーであるハル・ブレインが亡くなった→ハル・ブレインのドラムといえば、The Ronettes”Be my baby”っしょ! という安直な連想ゲームでしたが、予想外にそこそこウケました。
年末に近づくにつれ、無性にロネッツが聴きたくなるのに加えて、昨年は知人や身内でも訃報が続き、そのたびになぜかこのレコードのことを思い出していました。
この曲が一番好きです。
レピッシュ “パヤパヤ”
雑誌の『宝島』ばかり読んでいた中高生の自分は、このレピッシュを含むアンジー、筋肉少女帯あたりの通称「ポコチンロック」をよく聴いていました(この言葉はまったく流行った形跡はありませんが)。
特にレピッシュは、縦ノリ全盛のバンドブーム時代にあって、横ノリかつパンキッシュなところが好みでした。これは、そんな彼らの1987年発表のデビューシングル『パヤパヤ』。そのB面に収録された「タンポポ」は、ティンバレスを多用するドラム、凝ったベースライン、不可思議なコード感のキーボードなど、今聴いてもなかなか聴き応えがあります。
と思ったら、「タンポポ」は動画がなかった。ちぇっ(ニコニコ動画にはある)。
East Village “Back Between Places” UK オリジナル
一度このB面に収録された”Her Father’s Son”のPVをテレビで観てから、友人と血まなこで探したものの見つかりませんでした(1988年リリース)。アルバム未収録で、シングルのB面曲のみ……そりゃ福岡でいくら探してもないはず。
試聴で聴いた瞬間、当時のいろんなことがブワっと頭に流れ込んできてツラくなったので、慌てて針を上げました。今聴けば単純極まりない3コードの曲ですが、当時の自分にはこの上なく新鮮だったなあ。
Caetano Veloso “Caetano Veloso” ブラジル オリジナル
ずっと探していた一枚。
一度、鎌倉の『カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ』に飾ってあって本気でくすねようか悩みましたが、大人なので止めました。
昨年の秋。出張帰りに一瞬だけ寄った福岡のレコード屋で見つけたときは、思わず声が出ました。ジャケがいまひとつキレイじゃないことを除けば、音質は最高。ブラジル万歳。うっとりするような、カエターノの歌声を聴くたび、無理して買ってよかったなあと思います。
そういうわけで、今年もいろいろ攻めていこうかと思います。